Lovesick 28

第80話

そう言ってしまった後に後悔した。

知らなくていい気持ちを波久に知られてしまった。


「……ごめん、昔の事だから。」


「嫌われていたなんて思いもしなかったな……。」


「だから今は違うって!」


俺は波久の肩に触れる。

だけどそれは拒否されてしまう。


「俺は俺なりに壁にぶつかってた。」


「え……?なに、に?」


「言わねーよ、絶対お前になんか言わねー。」


ダイニングテーブルに置かれたチョコミントのアイスはとっくに溶けていた。


「凪、兄弟でも言えない事はあるんだ。秘密はある。」


「……分かってる。」


「そうか……、あ、俺ちょっと出掛ける用事があったわ。」


そう言って波久はクローゼットのある部屋に入りジャケットを手に持って出てくる。


「じゃあ、俺帰る。」


買った荷物を持って玄関に向かう。


「凪、」


呼び止められたから振り向く。


「なに?」


波久は薄く笑う。


「俺は凪を嫌いだと思ったことは1度もねーよ。それはこの先も変わらない。」


「あ、ありがとう。」


そう言って玄関の扉を閉めた。

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