第35話

「菜々。」


目の前に浦崎君がいた。


「あ……、」


「昨日は波久の所に行ってくれてありがとう。」


そう言って私の隣に座る。


「ううん。浦崎先生出勤してましたね。」


「あ、会ったの?」


「う、うん。話してはないですけど。」


会ったけど逃げてしまった。

私は……彼に拒絶されたから。


「菜々が波久のこと苦手なのにごめん。でも……俺心配で、波久は俺よりしっかりした兄なんだけど大事な時は全然頼ってくれないから。喧嘩もするけどこっちが関わってないと何処かに行ってしまいそうな、そんな感じがするんだ。」



浦崎先生は、貴方のことをすごく大事に思っているのに。言いたいのに言えないもどかしさが私を支配する。


「それなのに時々、波久に菜々を奪われそうな気もするし。」


「はい?あ……ないですそれ、絶対。」


そう言うと浦崎君は目を丸くした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る