始まり②
「頭痛い」
1人呻きながら近くのカフェに入った。
この後13時からクライアントの会社で打ち合わせ。時間に余裕を持って11時50分には近くにきていた。この辺りで昼食を取り、13時前には会社に向かう。
手頃なカフェに入りサンドイッチとオレンジジュースを注文した。スマホをいじりながら時間を潰す。
ここ最近睡眠時間をまともにとっていないため頭が痛い。瞼も重く目を開けているのすら億劫。
「——平手、平手……おい、平手唯」
「え」
気づけば私は眠ってしまっていたらしい。座ったままの体制で。上司の黒部さんに起こしてもらったみたいだ。
「あ、すいません。え、黒部さんなんでここに」
「俺のクライアントもこの近くなんだよ」
「あ、そういえば」
寝起きで頭が働いていない私を呆れたように見る。
「時間、大丈夫か」
「時間?あ」
手に握ったままのスマホで確認すると12時45分。いくら近いとはいえギリギリだ。
急いで伝票を持ち立ち上がると運悪く会計待ちの客でレジは行列ができていた。
「払っておくから貸して」
私の返事も待たずに伝票を奪われる。申し訳ないと思うけれどこのままだと遅刻してしまう。
「ごめんなさい。会社に戻ったら改めてお金払います」
無事クライアントの会社へは時間通りに間に合い、打ち合わせを終えた。
この後会社に戻る。
昼食の最中に時間を気にせず眠ってしまったこと、お会計を任せてしまったことを黒部さんに謝罪しなくては。
会社へ戻ると黒部さんしかいなかった。
「ただいま戻りました」
「おかえり」
荷物を自分のデスクに置き黒部さんの席は向かう。
「あの、先程はすいませんでした。黒部さんが起こして下さらなかったら遅刻してました」
勢いよく頭を下げれば困ったように笑われた。
「頭あげてよ。別に怒ってないから」
笑い声につられて顔をあげる。すると黒部さんが近づいてきて私の顔を至近距離で見つめた。
射抜くような強い視線に思わずたじろぐ。その反面、今までにないほど至近距離で黒部さんの顔を観察してしまう。
まつ毛長いなー。
不動産会社の社長を親に持つ御曹司。自身は両親の会社を継がず大手経営コンサルタントに就職。そして27歳で主任まで昇進したエリート。
抱かれたい男No.1と女性社員から密かに噂されている人。
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