第13話

それからも何度か森の中に迷い込んだ人たちに出会った。

彼らと会話をする中でなぜこの森が魔の森なのか、なぜ入ると抜け出せないのかということがだんだんわかってきた。

一つはコンパスが機能しないこと。

リィラはその人が持っているものを見るまでコンパスというものの実物を見たことがなかったが、見れば一目瞭然だった。

本当ならば一定の方向を示すはずのコンパスの針がぐるぐると回っているのだ。これでは今どこにいるのかもわからない。どちらに進めばいいのかも。

しかし奇妙なのはこの場所がいわゆる「磁場」と呼ばれる場所ではなさそうだということだった。

入れば失踪するため研究が進んでいないことも謎が多く残る理由でもあるが、「磁場でもないのにコンパスが機能しない」のがその一因だろう。

そして二つ目は自分がいる場所がわからなくなってしまうこと。

これはコンパスの話と似ているようで全く異なる。

例えば迷子にならないように、目印を書いたり、目印に置いたりした後に先に進む。しかし迷ってしまうのでもと来た道を戻ろうとする。

しかしその「もと来た道」が分からなくなる。たとえ「この方向から、まっすぐ来た」と思っていても、わからなくなってしまう。

中には「なかったはずのものがあった」「あったはずのものがなかった」と言う人もいた。

しかし、リィラにはその感覚がわからなかった。

森はいつも同じ姿をしているし、現にリィラは拠点を設けて、毎回その家に帰ってこられている。

今自分がどこにいるのかわからない、という感覚はこの森に入ってから感じたことがなかった。

どうにも話が噛み合わなくてもリィラは彼らを案内し、森の外に連れ出した。

彼らからは奇妙な目で見られた。もしかしたら怪異か何かだと思われたのかもしれない。

魔術は決して使わなかった。

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