第5話

『祝福』

その文字に自然と目が行った。

魔力と魔術についての本は読めば読むほど面白く、使い方を誤らなければ非常に有用な魔力の使い方……「魔術」についてその種類や使い方が詳細に書かれていた。

本は前のほうが魔力や魔術の基礎や簡単な魔術、後ろになればなるほど難しい魔術や危険な魔術という構成になっていた。

リィラは簡単な魔術から少しずつ難しい魔術に挑戦していき、昨日などは火や水を手のひらの上に出して浮かべて見せた。これで夜中に喉がかわいても大丈夫だし、夜が少し明るくなる、とリィラは喜んだ。

徐々に魔術がわかるようになってきている。

本の中盤あたりでリィラの目にふと止まったのが「祝福」の魔術だった。

難易度は低いが、意外と消費する魔力が多い。種類が多く、術者が誰に贈りたい「祝福」なのかをよく考えて使うべきだと記されている。

たとえば結婚式。たとえば試験前。たとえば出産。生まれたばかりの赤子へも「祝福」の魔術は使われるらしい。

おとぎ話のように具体的なものを与えられるわけではなく、現在ではあくまで少し強めのおまじないのようなものだと。

「おまじない……」

リィラは本から顔を上げて、母の腕に抱かれた妹を思い返した。まだ顔も見ていない、どんな名前かもわからない。会うことさえないのだろう。存在だけを知っている妹。

でも、もしも───もしも、妹に祝福が贈れるのだと、知ってもらえたら。

もしかしたら、もしかすると。

それはリィラにとっては希望だった。ひとりきりでごはんを食べなくて済むなら。あの輪の中に入れてもらえるのなら───

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