第283話

「なんで……?」



私は朱羽に対して酷いことをしてきた自覚がある。



そんな奴に生きて欲しいなんて…。



でも思い当たる節はある。



多分…【そういうこと】だと思う。



「叶斗様が救った命を、無駄にして欲しくありません」



「けど…、私の命は……叶斗のものだった、のっ…。その本人が、いない今、叶斗の傍にいきたいよっ」



「それは……出来ません」



そう言って朱羽の抱きしめている腕に力が込められたのがわかった。



「…っ………かなとぉ、」



何度呼んでも、何を言っても…帰ってくることはない。



朱羽の腕の中で、私の泣き声が部屋に響くだけだった。






* * *






箱に入っていた【黒い】ネックレス。



指輪なんて、私たちにははめる指がない。



このネックレスは、前に着けていたチョーカーに似てて…。



けど、これにGPSなんて付いてない。



見る本人がいなきゃ意味がない。





こんなのなくたって……指と刺青で分かってるくせに。





酷いよね……。







私の首に【ヒカル】この黒が、繋ぎ止める【モノ】でしかない。

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