第271話

何が起こったか分からない。



私は後ろから腕を引っ張られ、尻もちをついた。



と同時に、目の前で何が起こったのか理解できなかった。



「なんでっ…庇うの、?」



「…ッ、てめぇ如きがっ…2度も…千花、に……手ェ出す、なッ、よ…」



いや………理解したくなかったんだ。






「いやああああああぁぁぁぁああああ!!!!!!!!」






私の叫び声が響く。



腕を引っ張られた時に少し飛ばされて、叶斗と女との距離があったが、それがいけなかった。



雨の中でもわかるほどの血の量。



急いで駆け寄る私と少しずつ後ずさる女。



叶斗の姿は前に見た時と同じ、苦しそうに息をしてて…。



銃で撃たれた日、怪我をして帰ってきた日が頭によぎる。



あの時はまだ大丈夫、なんて甘い考えだったが……今の叶斗は腹にナイフを刺されていて………。



それも、根元まで……………。



「かな、と……かなとっ…ねぇ、かなと………」



「…………」



反応してよ、答えてよ。



「ヒュー、ヒュー、ッ」と息をしているだけで答えてくれない。



「叶斗、叶斗!ねぇ叶斗!!」



必死に名前を呼ぶ。



私は考えたくなかった。



『叶斗が死んじゃう』なんて。



だけど、だけど……。



「…千、花………聞いて、く…れ」

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