サイゴ

第254話

ガサゴソと物音で目を覚ます。



「…叶斗?」



「悪い、起こしたか。まだ寝てていいぞ」



「ん、起きるー」



3日前に群馬に行くと言って、その日が今日からだったはず。



「体調は大丈夫か?」



「まぁ、いつも通りかなー」



「具合悪くなったら言えよ?」



「うん」



まだ準備をしているため、叶斗は止まった手を動かし始める。



「ねぇ叶斗、お願い聞いて欲しいの」



「ん?」



私のお願いの言葉に、ベッドの方へ来てくれる。



「服なんだけど、フードがあるものがいいの。その、この傷じゃ怪しい目で見られるだろうし、叶斗にも迷惑だろうから」



「俺に迷惑なんてかかんねぇよ?千花はそのままで十分綺麗だし、俺の横に立ってりゃ問題ねぇって」



「いや、違くて…」



そう言ってくれるのは嬉しいんだけど…。



「見られたく、ねぇのか?」



少し伏せた顔に優しく触れてくる。



「うん……周りの目が、怖い」



「わかった。準備しとくな」



「…ありがとう」

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