第253話

耳を疑った。



『綺麗』…?



どこを見たらそう言えるの?



「嘘…言わないで」



「嘘じゃねぇ」



「こんな傷のある汚い女を、綺麗なんて言うはずないでしょ?どこを見たら……叶斗には私が見えてないの?」



私の傷を触っているのに、その目に私は映っているのに、なんでそう言うの?



ちゃんと、私を見て、傷を見てよ…。



「俺にはどんな千花も綺麗なんだよ」



「嘘言わないでって言ってるじゃん…どうして、」



「好きだから。誰よりも好きで愛してるから」



私の言葉を遮られて言われた。



「言ってるだろ?お前以外…俺は愛していない」



「でも……」



「否定して欲しいか?」



私の否定の言葉に、叶斗からの声のトーンが変わった。



それにビクッと反射的に身体が動く。



「俺が他の女に目移りしてるっつーなら千花からの罵詈雑言は受け止める。さっきみたいに言ってもらって構わねぇ。だがな、俺はお前じゃなきゃ、指切り落としたり、チョーカー付けて監禁なんてしねぇ。そうでもしねぇと千花はどっか行っちまうだろ?」



その言葉に、ゆっくり首を横に振る。



「目ェ離すとフラっといなくなるからなー。まぁ千花の心の赴くままに動いてるんだろうけど」



私の行動を思い出すように呟かれる。



「そんな所も含めて好きだからな。だが忘れんなよ」



何を?と言おうとした瞬間、鼻先が当たるほど顔を近づけて続けて言ってきた。



「お前の瞳に、口に、頭に…心に刻め。お互いがお互いを求めてんだ。俺もお前も壊れている。離れることは出来ねぇんだからな」



「っ…」



声が出なかった。



叶斗が怖いからじゃない、心が堕とされたからだった。



縋るように私の手は叶斗の顔を掴んだ。



「離、れ…ない」



絞り出した声では、それが精一杯だった。



そんな私に叶斗は怪しく笑う。



「離れられねぇんだよ、千花」



そう言って私にキスをした。






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