第247話

出会った頃に戻りたいとか、そういうんじゃなくて…傍にいることも出来ない今は嫌なの。



「叶斗…」



名前を呼んでも顔を上げてくれることはなかった。



私はどうしていいかわからず、その場から動けなかった。



一向に顔を上げない叶斗の頬に、涙が伝ったのがわかった。



「っ…叶斗、ごめん、ごめんね……」



咄嗟に抱きしめてしまった。



私みたいに声を出すことはないが、泣いていることには変わりない。



私には頭を撫でるしかできない。



どうして泣いているのか、私が原因なのか、聞いたところで教えては

くれないだろう。



「……で…………だろ」



「ん?何?」



「俺が…好きで千花以外の女と……会うわけないだろ」

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