第232話

「理由になってないんだけど」



少し怒りを含ませて言った。



『俺にはお前しかいない』と言われて、はいそうですか、なんて言うわけねぇだろ。



少しずつ話される事実に、頭に上ってた血が冷める。



「何度も言ってるだろ?俺には千花しかいないし、千花が生きてるから俺が生きてる」



うん、何度も聞いた。



私に触れようと伸びてきた手を振り払う。



「叶斗から、私に触れないで」



「…っ」



「生きることも死ぬことも、叶斗の掌にある事は変わらない。だからって何でもしていいなんて事はない。私が壊れれば、叶斗だっておかしくなるでしょ?それを分かって」



「あぁ…」



袖を掴んでいた手を離し、こう言った。



「仕事、いってらっしゃい」

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