第204話

* * *




足元にかかる水が冷たくて気持ちいい。



「千花、俺で良かったのか?」



聞いてきた朱羽に、私は質問で返した。



「今の叶斗を見て、一緒に来てくれたと思う?」



「…」



「朱羽は何か知ってるかもしれないけど、私は今叶斗が何してるのかわからない。それに…他に女いるでしょ?」



『女』という言葉に、繋いでいた手がピク、と動いたのがわかった。



「…いたら、お前は死ぬか?」



「んー、我儘言うなら叶斗に殺されたいな」



そのまま言葉を並べる。



「もう十分生きたし、叶斗と出会って今まで楽しかった。そりゃ感情のまま我儘言って困らせてたけど…だけど、今まで生きてきた中で凄く楽しくて充実してたんだ」



今死んでも心残りは無い。



楽しかった事には変わりないし、叶斗に捨てられるくらいなら殺されたい。



「…そうか」



朱羽の表情は変わってないけど、繋いでいる手は相変らず力が入っている。



「朱羽、手、痛い」



「ごめん…」



段々と強くなる力に眉をひそめて言った。



「朱羽は基本顔に出ないけど、手繋いでるとわかっちゃうね」



いつも表情を崩さないから、感情を読むのが難しいけど、繋いでいたら分かる。



それも朱羽らしい。



「車、戻ろっか」



「…そうだな」

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