第201話

「行先は何処にしますか?」



「海…がいい」



「では、近くの海までお送り致します」



窓の外を眺めては、さっきの叶斗の姿が思い浮かぶ。



最近はご飯も一緒に食べれないし、もし食べれたとしても着信音で一緒にいる時間を遮られる。



その度に、まただ…何してるの?なんて聞けない言葉が頭を支配する。



その後、1人で食べるご飯は不味くて食が進まない。



もし今運転してるのが朱羽じゃなくて叶斗だったらどんなに幸せか。



また人を信じられなくなる時がすぐそばまで来ている。



「ッ…」



小さく嗚咽が出て、涙が零れる。



我慢していたものが、今になって溢れ出す。



「…千花」



「ご、ごめんね朱羽…私は、っ、大丈夫だ、から」



「泣き止めとは言わねぇから、泣きたいだけ泣いとけ」



朱羽の口調が普通に戻った。



こういう時の朱羽は、少し怖い。



何考えているのか、私をどうしたいのか…。



だけど今は朱羽の言葉に甘えて、泣きたいだけ涙を流した。

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