第200話

* * *






「叶斗、ご飯食べる?」



私の言葉に視線だけ寄越して答えた。



「後で食べるから、千花は先に食べてろ」



「……うん」



叶斗の反応にチクリ、と心が痛む。



少し顔を伏せた様子の私に朱羽が言葉をかける。



「千花様、私に出来ることがありましたら、申し付け下さい」



「なら…外に行きたい」



クイッと、朱羽の袖を引っ張る。



「今日から、朱羽と外で食べたい」



「…千花様、叶斗様からは」



「いいから…叶斗なんていいから。今は朱羽が傍にいて欲しいの」



朱羽と視線を合わせることなく私は会話をする。



「別に外に出て行っても、今の叶斗は私の事は気にしないと思うから……。私の命令よ、朱羽と2人で外に行きたい」



少し沈黙があったが、答えを出してきた。



「………車でよろしいですか?」



「うん」



「かしこまりました」



そう言って私を抱えて仕事場から出る。



いつもなら朱羽にそんな事されると怒る叶斗が、見向きもせず何も声をかけてこなかった。



あぁ、私たち…もう終わりなのかも、なんて離れられるはずもないのなそんなことを思った。

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