食欲と風

第199話

夏の暑さも過ぎて、秋が近づいてくる。



また仕事場へ私を連れて行ってくれるようになった。



だけど、体調が完全に回復した訳じゃないため、仕事場でもベッドに横になっている。



「千花、お昼食べるか?」



「うん、食べる」



仕事の量は前より多い気がした。



それに、最近はいつも誰かと連絡を取っている。



仕事の人だろうと考えてはいるけど、嫌な気持ちになる。



だけど、『不安だ』『寂しい』と言えば必ず傍に来てくれて、安心させてくれる。



だから、まだ保っていられるのだろう。



その嫌な気持ちが、『もしかしたら』なんて言わないためにも。



「叶斗」



「ん?」



「…やっぱ、何でもない」



聞きたいような、聞きたくないような…。



頬にキスをして頭を撫でてくれる手に、私は少し笑を零した。

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