第183話

千花side




「魁、あのね、外、行きたいの」



「何するんスか?」



「何もしないよ。外に出たいだけ」



今日の私はいつもなら言わないことを言った。



人は限界を超えるとおかしくなるのかもしれない。



体力がない私が外に行きたいなんて、おかしな話だ。



「外、暑いっスよ」



「魁がいてくれるなら、大丈夫」



「倒れても困るんスけど」



困ると言われて、気付く。



「わかった」



魁にとっても、迷惑な存在なんだ。



「なら、薬頂戴?」



掌に置けと、手を差し出す。



魁が動く気配は無い。



無視?どうして?



外には出ないんだから、薬くらい、いいじゃん。



「渡せないっスよ、そんなもん」



「…どうして?」



「ダメなもんはダメっす」



「私は欲しいの」



裏社会にいればクスリの一つや二つ、やってるんじゃないの?



「魁…」



「禁止されてるんで無理っすよ」



「どうせ叶斗でしょ…」



ぼそっと独り言のようにいい、布団をかぶる。



「禁止されてること以外ならなんでもするんで、言ってください」



「……うん」

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