第173話

傷の手当をしてる朱羽を眺める。



ボーッとして、頭が働かない。



「千花様、足も怪我していますよね?」



「……うん」



「もう少しで終わりますので、お待ちください」



手際よく処置してくれている朱羽の服を左手で掴む。



「どうかされましたか?何か気に触るようなことでも…」



握ってる手が震えているのを見てか、手を重ねてくれた。



静かに口を開く。



「……ごめんなさい。外に出て、ごめんなさいっ………」



「千花様、私ではなく叶斗様に…」



「嫌わ、れる………叶斗に嫌われちゃうよ………」



ボロボロ溢れる涙。



「っく……ぅっ…」



1度溢れてしまえばそれまでで…止まることを知らない。



「千花様、ゆっくり深呼吸して下さい」



「ウッ……はぁっ………ッ」



息が……出来ないよ。



「千花様、ゆっくり…」



「朱羽!千花に触れるな」



朱羽の手は伸ばされたが、触れる前に戻される。



その間も、私の呼吸は苦しくなるばかり。



「千花、大丈夫だ、落ち着け」



「ぁ、っ……」



傍に来てくれた叶斗に抱きしめられ、優しく背中をさすられる。



「ゆっくりでいい、ゆっくり呼吸しろ」



少しずつ落ち着く呼吸に、そのまま叶斗にもたれて眠りについた。

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