第170話
叶斗side
「社長、こちらの資料本日中にお願いします」
机に置かれた資料は山積み。
今日中のやつは終わるだろうけど、その後もやらなきゃいけない仕事がある。
それに千花の様子がおかしい。
俺が傍にいてやれていないのが原因だが、それとは違う、何か黒いものが千花に取り付いている気がする。
朝、声をかけようとすると必ず遮られる。
夜は先に寝てるから何も言葉を交わすことはない。
我慢させてることくらいわかってる。
千花が言えば、休むことくらいはできる。
だけど、俺の仕事が終わったら構って欲しいとしか言わない。
嫌な予感しかしない。
そのうち、呑まれるはずだ。
そうなる前に千花との時間を取らないと…。
そんなことを思った矢先、朱羽から電話があった。
『叶斗様、千花様がまた逃げ出しました!GPSの確認お願い致します!』
「わかった…朱羽、お前は千花を追うな」
『なぜ、ですか?千花様を1人外に出してしまったら…』
「あいつは雨が好きだ。そこにお前が行っても千花は何も動かないだろう。場所がわかり次第連絡入れる。それまで待て」
『…かしこまりました』
電話を切り、GPSを確認したした所、会社の方に向かっている。
動いているということは、そのうち着くはずだ。
様子を見るため、作業を中断していた手を動かす。
だが、GPSから目を離したのがいけなかった。
10分くらい目を離し、スマホに視線を戻すとさっきと位置が変わっていねぇんじゃねぇかと思った。
動いてんのか?
スマホをじっと見つめる。
チッ、チッ、チッ…と、秒針の音が耳に届くのが怖い。
「チッ…」
舌打ちをして、千花の元へ急いだ。
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