第167話

次に目を覚ました時、やはり叶斗はいなかった。



あぁ、休みって言葉は嘘だったんだなって。



そんな嘘、つかなくていいのに。



部屋を真っ暗にして、また縮こまる。



反応見たいがために、嘘つくなんて有り得ない。



「嘘つく叶斗なんて…嫌いだよ」



じわっと涙で視界が歪む。



「嘘なんてついてねぇよ」



抱きしめられ、叶斗の匂いが鼻をくすぐる。



見上げると、頭にタオルが置かれ、さっきまでシャワーを浴びていたみたいだった。



「起きる前に戻ろうと思ったんだけどな」



目元の涙をぐいっと拭ってくれる。



「うん…。仕事いいの?」



「明日から仕事だけど、休むことはできるし、8月になれば休めるからそん時までどこ行きたいか考えとけよ?」



「私は……仕事が終わったら構って欲しいって言ったの。だから無理に休まなくていい」



「…強がんなよ」



「強がってないよ。どうしたの?叶斗」



叶斗から見て、私はどう映っているのか。



強がるも何も、暫く家にいろって言われたからそれを守るだけ。



ダイジョウブダモン…ガマンスレバイッショニイレルカラ。



「千花、我儘言えよ?」



その言葉には私は答えなかった。



そうさせてるのは、誰のせいだと思ってるんだよ。



そんな事は言えず、叶斗から視線を逸らした。



何を意味したか、それは私の心がここに無いことと等しかった。

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