第166話

そう言っても、表情は変わらないまま。



暫くして、泣きそうな顔になった。



「叶斗?」



名前を呼べば、強く抱き締められた。



私は叶斗にそんな顔をして欲しいわけじゃない。



私は大丈夫、自分の仕事をしていいよって事で言ったの。



仕事は仕方ないことなんだから、終わったら構ってくれればいいの。



大丈夫…ワタシハダイジョウブナノ。



待っていれば……いいんだよね?



「……本当に、ごめん」



ぼそっと耳元でまた謝られた。



「うん、さっきも聞いたよ。叶斗が謝る事なんてないじゃん」



私を抱きしめる力が強い。



「大丈夫だよ」



そう言って抱き締め返した私だったが、身体も心も誰かに乗っ取られたような感じがした。

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