第165話

頬に当たる冷たい感覚で目が覚める。



「起きたか」



「叶…斗?」



「ん?」



「…こんな、私で……ごめ、んなさい」



寝ぼけているとはいえ、口から出た言葉は謝罪だった。



頬にある叶斗の手を握る。



「俺の方こそ、ごめんな」



チュッと唇にキスをしてくれた。



「仕事は?」



「今は夜中だ。いつから寝てんだ?」



「…わかんない」



夜中まで寝てたのか…。



今叶斗に私の疑問を聞いてもその答えは返ってこない気がする。



「飯と風呂はどうする?」



「…いらない」



「明日休みだから何かしたい事は?」



「ない。家でいい」



私の様子が可笑しいことには気付いてて、声を荒げられた。



「千花っ!」



グイッ!と勢い良く手を引っ張られ、身体を起こされる。



「お前、何でっ…」



そこで叶斗は言うのを止めた。



何か恐ろしいものでも見たかのような顔をしていた。



「私は、ちゃんと家で待ってるよ。だから仕事が終わったら私に構って?」



だけど私は自分がどんな顔をしているのか分からない。



明日は休みと叶斗は言ったが、本当に休みなのだろうか?



私がどんな反応をするのか伺って言った言葉ではないのか?



疑うことばかり頭によぎる。



私はどんな風に叶斗に映ってるの?



そんな怖い顔をさせるような顔をしてるの?



「叶斗、私は大丈夫だから…心配しないで」

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