第163話

* * *






「千花」



「いってらっしゃい、叶斗」



毎朝何か言いたげな顔をしては、私が遮る。



仕事の邪魔しちゃいけない、家で待ってないといけない。



終わればまた傍にいれる。



「…あぁ、行ってくる」



叶斗が部屋を出て行くまで、笑顔でいる。



ドアが閉まったのを確認して、無理やりあげていた口角を止める。



「朱羽、薬ちょうだい」



私の声に、カラン…とサイドテーブルに3粒置かれた薬。



それを目にして私は言う。



「…これだけ?」



「はい」



「どうして?」



朱羽を見ても何も答えてくれなかった。



「………水」



「かしこまりました」



置かれたコップを手にして薬を飲む。



「出てけ」



「失礼します」



口調が変わり、また再発し始めている。



呑まれてしまう私はまだ未熟者。



自分で自分を保つのにも…限界はある。

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