第161話

* * *






「ねぇ叶斗、私も仕事場行っていい?」



叶斗の怪我が完全に治った訳じゃないけど、仕事は出来るから翌日仕事に行く前に聞いた。



だけど、私の思っていた回答じゃなかった。



「…悪い、暫く家にいてくれ」



「ぇ、何で、?私がいたら…邪魔?」



自分の顔が引き攣っているのがわかる。



「そういう事じゃない。『ある仕事』が終わればまた連れて行く。それまでだ」



今度は何があるって言うの?



壮はいなくなった。



なら次は?



私に関わる人はいないはずだよ?



「……その仕事は、いつ頃終わるの?」



「わかんねぇ」



「そう…」



私がどう思っているか分かっている叶斗が話そうとしたのを遮る。



「わかった。叶斗の帰り…待ってるね」



今作れる笑顔で演じた。



大丈夫、必ず叶斗は帰ってくる。



自分に言い聞かせないと、保てるものも保てなくなる。



「朱羽は傍に置いておく。千花、俺の願い聞いてくれるか?」



「なぁに?」



優しく顔の傷を撫でながら言われた。



「1人で外には出るな。何かあればすぐ俺に連絡しろ。分かったな?」



「……うん」



「千花、愛してる」



その言葉に、叶斗から視線を逸らす。



「ありが、とう…」



チュッ…とキスをして部屋を出ていった。

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