第160話

* * *






「千花様、お食事お持ち致しました」



抱きしめられて寝ていたが、2時間程で目が覚め、夜中からずっと朝まで起きていた。



まだ叶斗は起きていない。



「千花様、お食事を…」



そこで言うのをやめたみたい。



私の表情を見てか、何も言ってこなくなった。



「こちらに置いておきます」



飲み飲だけ手に取り飲んだ。



まだ寝てる叶斗を横目に、ベッドから出て、寝室にもある窓辺へ向かう。



カチッとライターを付けてタバコに火を灯す。



口に含んで味わうけど、叶斗の見よう見まねだから美味しいとは思わない。



ふぅー…と煙が空に消える。



そういえば、灰皿近くにないや…なんてボーッとしてる頭で思い、窓を開け外に捨てる。



「…吸ってんのかよ」



2本目に火を付けようとしたら、後ろから声が聞こえた。



「叶斗……起きたんだ」



タバコを置き、トトト…とベッドへ戻る。



「あんま吸うなよ…身体に悪いっつの」



「叶斗が吸わないなら私も吸うのやめる」



「そうかよ」



止めるとは言わなかったから、答えは出てる。



私の意志で吸ってるんだからいいんだよ。



「身体、大丈夫?」



「心配いらねぇよ」



優しく頭を撫でながら言われた。



「…そっか」



私は抱きしめている腕に力を込める。



「叶斗……死なないでね」



叶斗には聞こえない程度に、言い放った。

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