第157話

次の日の夕方。



寝室の扉が開く音が聞こえ、眠い目を擦り身体を起こした。



「叶斗、おかえり…」



声をかけ目を開いて叶斗の姿を目にした瞬間、眠気が吹き飛んだ。



脇腹を押えて、血が服についている。



「か、なと?」



ベッドから降りて急いで駆けつける。



「どう…したの?誰にやられたの?」



痛みが酷いのか…見上げた叶斗は何も答えてくれなかった。



その代わり、『ヒューッ、ヒューッ』と辛そうな声だけ聞こえる。



一応手当はしてあるけど、応急処置にしか過ぎない。



「叶斗っ、叶斗!」



「ッ…俺、は……大丈夫、だ」



私を抱きしめて言う。



こんな状態でも私を不安にさせない為に言う言葉だ。



「私が看病するからっ、死なないでよ…」



死んで欲しくない、独りにしないで欲しい……。



叶斗の心配より自分の心配だった。



とことん馬鹿なんだと思う。



叶斗をベッドに寝かせて朱羽を呼ぶ。



「朱羽、どうしたらいいの?叶斗がっ…」



「…叶斗様の傷は直ちに処置致します。後は傍にいて下さい」



そう言った朱羽がいつもの朱羽じゃなかった。



「朱羽…?何があったの?何で叶斗が刺されて帰ってくるの?」



「……」



暗い表情のまま、何かを隠している。



それに気付かない程、私は約2年一緒に叶斗と朱羽を見てた訳じゃない。



「壮は死んだはずでしょ?私が殺したんだよ?それなのに、何で叶斗が刺されたのって聞いたの…」



「まだ、確実な証拠はありません…分かり次第お伝え致します」

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