第154話

「遠いところお越しいただきありがとうございます」



「いえ、とんでもない」



効果音でも聞こえそうなくらいの笑顔で対応する。



「部屋に案内致しましたら社長お呼び致しますので、座ってお待ちください」






* * *






俺の会社にほとんど利益が無い話を延々と聞かされ3時間程で開放される。



「そういや亜御那さん、うちの娘との婚姻はどうだね」



「娘?」



「えぇ、れいと言うんだがね」



唐突に言われて困った。



雪野社長に娘なんていたか?



「怜、入っておいで」



「はい、お父様」



入ってきた女に驚く。



「亜御那さん、雪野怜と申します」



披露宴の時にキスしてきた女だった。



「亜御那、叶斗だ」



「存じ上げております、亜御那さん」



ニコッと笑う女に顔が引き攣る。



「怜は良い娘だ。性格も良いし、頭も良い。顔も美人だろ」



「良い人だと思いますけど、俺は誰とも婚姻する気はありませんよ、雪野社長」



「そんな事言わずにお付き合いだけでもどうかね」



「雪野社長、俺は生涯独りでいると決めていますよ」



こんなブスと付き合えるわけねぇし、そもそも千花以外本当に眼中に無い。



「まぁ、気が変わったら教えてくよ、亜御那さん」



「私はいつでもお待ちしてますわ」



2人して部屋を出ていき、静かになる。



「叶斗様、部屋に戻られますか?」



「…あぁ。気色悪ぃ」



口調が気持ち悪い。



あんな喋り方なんてしてねぇだろ、あの女。



「飯は朱羽が持ってこい」



「かしこまりました」

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