第146話

「千花、行けるか?」



叶斗の言葉を無視して私は言う。



「叶斗、見て見て!これ可愛くない?」



少しだけ出会った頃に戻った気がした。



「あぁ、似合ってる」



くるっと回って自分の姿を見せたいが座ったまま私は見せた。



叶斗の誕生日に着て見せるはずだったものを着た。



私の元へ来て、頬に手が当てられる。



「叶斗?」



約2週間一緒にいて、私は思ったことがあった。



叶斗に無理をさせているのではないか…と。



度々見せる不安そうな、辛そうな顔がそう思わせる。



「……綺麗だ」



ほら、今もそうだ。



そんな顔しないで欲しい。



その表情を見る度に、『私がいなけれはこんな顔はしないんだろうな…』と思ってしまう。



「行くぞ…」



「うん」



首に手を回して、叶斗に掴まる。






* * *






大きい問題が解決したのに、なんで言わなかったの?



私の中では終わったものだと思っていた。



それが間違いだった。



何も終わっちゃいない。



やはり、出会ったのが間違いだった…。

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