第143話
「……ん、」
目を覚ますと、私は叶斗に抱きしめられていた。
顔を上げ、まだ眠っている叶斗の顔を眺める。
そ…っと頬に手を置く。
出会った時の私はもういない。
私の視界に映る、自分の手の火傷が物語る。
「ねぇ叶斗…もう私を愛さなくていいよ、捨てて」……なんて言ったら叶斗は怒るよね。
「愛してくれて、ありがとう」
ボソッと聞こえない程度に私は言った。
「最後みてぇな言い方だな」
「…聞こえたの?」
「まぁな」
私の手に叶斗の手が置かれる。
お互い何か話すわけでもなく、無言で見つめ合う。
叶斗の瞳に映る私が見え、「あぁ、こんな風に映ってるんだな」と思う。
とても醜く、よくこんな姿でも愛せるな…とも思う。
もう二度と消えない跡。
見えない目。
どうして愛せるんだろう。
沈黙を破ったのは私。
「叶斗、お腹空いた」
私の言葉にキョトン、とした。
だけど、次の瞬間笑われた。
「ハハッ、なんか食うか」
チュッと額に1つキスをして、身体を起こす。
「下に行って、飯準備してもらうから待ってろ」
「うん」
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