第134話

手元を映してる視線を上げる。



「手当しましたら、叶斗様の元へ連れていきます」



乾いている血を拭き取り、手当をしてくれた。



私はそんな朱羽を他所に、自分の疑問を聞いた。



「…朱羽、どこに行ってたの」



だけど、答えてくれなかった。



「痛みはありますか?」



「朱羽……」



私の声のトーンに気付いたみたいで、謝られた。



「お傍を離れてしまい申し訳ありません…」



「うん…」



謝ったから許したとはならないけど、それ以上は聞かなかった。



「只今から叶斗様の元へお連れします。あとは叶斗様の指示に従って下さい」



「私…やっと殺されるの?」



「千花、様?私はそのような事は…」



「だから消されるのは私なの?って。いつもいつも何処にいるのかわかんないし、何してるのかもわかんない。昨日蹴られたし、私が叶斗の隣にいる意味がわからないの。もう…壮と同じにしか見えない……ッ」



流したくもない涙が溢れ出てくる。



本当に本当に叶斗が壮と重なってる。



立てなくなるほど、初めて強い力で蹴られて叶斗はそんな事しないって思ってたの。



だけど、期待しすぎてたみたい。



私が描いていた理想の叶斗だった。



あれが本性だったのかもしれない。



昨日の叶斗の目が忘れられない。



あの銃で殺されると思った。



沈黙が流れる。



先に口を開いたのは朱羽で、放った言葉の意味をすぐには理解出来なかった。






「なら……俺と逃げる?」

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