第131話

叶斗side




顔を上げた千花の目に映った俺は、人を殺す時と同じ顔をしていた。



傷つけたい訳じゃない、殺したい訳じゃない…ただ俺だけを見ていて欲しい。



そんな願いは叶わねぇのかよ。



俺はしゃがんで千花と目線を合わせる。



「お前、朱羽と寝たのか?」



「…っ、ぁっ……ッ」



「ア゛ァ゛!?」



千花は、はくはくと口を動かすが声が出ない。



暫く蔑んだ目で見てると、声を絞り出して言った。



「…っ、ちがっ……い、一緒、に……寝て…ッ。叶、斗がッ……いなく、て…。だからっ……そ、の……」



「ヘェー。で?俺がいねぇからって朱羽とヤったのかよ。気持ちよかったかァ?」



フルフルと首を横に振る。



から溢れる涙は俺が怖いからなのか。



俺が触れようとしたら、さっきより怯えた目で視線を手に移す。



触られたくねぇってことかよ…。



行き場を失った手を戻す。



「…はぁ」



大きくため息をついた所で、後ろから声が聞こえた。



「あの、叶斗様…千花様は体調が優れていなく、休ませてあげた方が、ッ」



頬を掠める程度に、朱羽に向け発砲する。



「それ、俺に連絡した?」



「い、いえ…連絡する時間がなく、お伝えすることが出来ませんでした」



「あっそ」



また千花に視線を戻す。



「…あぁっ、や、……ごめっ、なさい…」



何に対して謝ってんのか、何に対して怯えてんのか分かんねぇよ。



「叶斗っ……たす、け…て」



目の前に俺がいるに、何故助けを求める。



千花はそう言って意識を失い、倒れた。

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