第127話

熱があるのを言い訳にはできないけど、情緒がおかしくなっていた。



「私の傍から…離れ、ないでっ」



「ですが…」



「嫌だよ…ッ」



離れて欲しくない、傍にいて欲しい。



置いていかないで…。



「一緒に、寝て」



「…千花、様?」



私の言葉に朱羽の戸惑いの声が聞こえる。



「叶斗、いないから…代わりに寝て」



グイッと自分の方に引っ張る。



「朱羽、お願い…」



少しの間があった後、こう言われた。



「…叶斗様が帰られるまでなら」



その言葉にムッとする。



「私の言うことが聞けないの?叶斗の代わりに一緒に寝てって言ったの」



「私が…叶斗様になんて言われているか分かって言っていますか?千花様」



そんなの分かってる。



だから叶斗に手を出されないよう私が止めてと訴えている。



私のせいで、朱羽に怪我を負わせているのは自分が1番分かってるんだよ。



「私が悪いって言えばいいじゃん…。私は朱羽に一緒に寝てって言ってるの」



「千花様を悪者になんて出来るわけがありません。私の思いも分かって頂きたいです…」



「…そう」



私は朱羽から手を離し、おぼつかない足でベッドを降り、扉まで歩いていく。



「朱羽、ごめんね」



追ってこないで、と目で訴えて部屋を出た。



朱羽の顔を見ても何も思わなかった。

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