第125話
* * *
「千花様、終わりましたので寝室へお運びしますね」
何も答えなったため、されるがまま運ばれた。
「何かありましたらお呼びください」
扉が閉まる音を最後に静寂に戻る。
左足は自由に動かせない、左目も見えない。
私、生きてる意味ある?
そう思い、刃物を探しにベッドから出る。
なんでもいい、ハサミでもカッターでも…それか銃。
ガチャガチャ、と引き出しを漁る。
どこに物があるのか把握してるのは叶斗と朱羽だけだから、引き出しの中身を全て出していく。
いくつか探していると目当てのものが見つかった。
あった……。
引き出しにハサミもカッターも入っていた。
私は切れ味がいいカッターを手にしてその場に座る。
その時丁度叶斗が帰ってきたみたいだった。
私は気付かない程、呑まれていた。
手をふりかざし、目いっぱい手に力を込め振り下ろした時、後ろから抱きしめられ、私の握っていたカッターは叶斗の腕に刺さった。
「って…。千花何しようとしてんだよ」
「あぁ、ッ…叶斗、?」
私が刺した、血が……出、て…。
「ごめ、なさいっ、ごめんなさいっ…叶、斗叶斗」
「謝る必要はねぇ。傷は作ってねぇか?」
「叶斗の腕が…血……」
流れ出る血は私の脚を染める。
「すぐ帰ってきて正解だったな…」
「叶斗、叶斗…」
「俺は大丈夫だ」
ヨシヨシと、頭を撫でられる。
「本当にごめんな、もう少しで終わるから待ってて欲しい」
「………………何が、終わる、の?」
私の疑問に答えてくれなかった。
「……私、いらなくなるの?」
叶斗の腕から流れる血は、私が流さなければいけない血なのでは?と思う。
「答えてよ…」
涙を堪え、絞り出して言う。
ギュウゥゥと爪の跡が付くくらい叶斗の腕を握る。
なんで何も言わないの?なんで何も答えてくれないの?
ポタポタ、と涙が叶斗の腕に垂れる。
「本当にごめん」
確かに涙は零れた…はずだった。
なのに、上手く泣けなかった。
何を感じ取ったのか、叶斗は少しだけ抱きしめている腕に力を込めた。
この日から、私の感覚がおかしくなる。
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