理由
第119話
* * *
私の情緒はいつも不安定。
死にたいと思う気持ちと、まだ叶斗と一緒にいたいと思う気持ちが交互に表れる。
私は相変わらず窓辺で1日を過ごす。
叶斗と夜眠ることはない。
眠くなったら足を引きずってソファーに移動する。
ここ数日、私から叶斗に話しかけることはなかった。
叶斗は前みたいに、仕事に行く前にキスをする。
何のために叶斗は私を置いて仕事に行くのか…。
隣にいたい…それだけなのに。
私がいると邪魔だと言われた気分だった。
キィィ……と窓を開ける。
1月の風は冷たい。
「千花様っ!?」
名前を呼ばれ、グイッ!とチョーカーに付けられた鎖を引っ張られる。
「いっ!…たい」
私が寝ている間に、叶斗は壊されたチョーカーと同じものを付けた。
鎖はプラスチックの為、そこまで重くない。
「申し訳、ありません…ですが、叶斗様から危険な行動は止めるよう申し付けられています」
「…うん、そうだね」
少しだけ痛む首をさすりながら言う。
「本当に、申し訳ありません」
「別にいいよ…今更傷が増えたところで目立たないでしょ?」
「ッ…、千花様の綺麗な身体に私が傷をつけたことは事実です。大変申し訳ありませんでした」
頭を下げて謝る朱羽を冷めた目で見る。
もう傷だらけの身体なのに、謝られても困る。
「…朱羽嫌い」
「はい…」
朱羽が悪いわけじゃないことは分かってる。
だけど、口から出る言葉はそんなもんだ。
「そうやって自分が全て悪い、で完結させないで」
「それは千花様ではないのですか?」
そんな言葉が返ってくると思わなかった。
「言われなくてもわかってんだよ!!」
カッ、となり声を荒らげてしまった。
「私に口答えしないで!!私を否定しないで…」
「千花様、私は千花様自身を否定はていません。そのように私の言葉を捉えられたのなら謝ります」
「悪くない、朱羽は何も悪くないよ……。私がこんなんだからいけないの…私さえいなくかれば誰も苦しまない…」
また呑まれる。
ここに叶斗はいない、縋る相手がいない。
私はどうしたらいいの?
染まる私を朱羽が抱きしめた。
「千花様は何も悪くありません。千花様がいることが叶斗様と私の幸せです」
叶斗がするみたいに、頬に手を当て、視線を合わせられる。
しばらく見つめ合っていると、朱羽の顔が近づいてきた。
朱羽、あんた何する気…?
上手く回らない頭で考えていると叶斗の声が聞こえた。
私は視線を叶斗へ移すと、銃口を向けられていた。
「朱羽…本当に殺されてぇのか」
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