第117話

「千花、何されたか言えるか?」



私の顔の傷を触りながら言われた。



「ゆっくりでいい」



首を横に振る。



「…わかった」



それ以上叶斗は聞いてこなかった。



私の姿から火傷以外にも打撲や骨折もある。



左足はろくに動かせない。



「寝室で休んどけ。朱羽を傍に置いておく」



抱えられ、運ばれる。



ベッドに降ろされた私は叶斗の服を離さなかった。



「どうした?」



「……いかないで」



叶斗の耳に届くか届かないかくらいの声で言う。



離れたくない、ずっと傍にいたい。



「ごめんな、やらなきゃいけねぇことがあるからよ…」



優しく頭を撫でてくれる手を振り払った。



「仕事行ってくる」



叶斗が部屋を出たことを確認してから、私は左足を引きずりながら寝室を出た。

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