第103話

千花side




気が付くと手首に包帯が巻かれていた。



罪悪感が出る。



叶斗に、30分大人しくしてろと言われたが、部屋を出てすぐに私は自傷行為を始めた。



痛みを感じない。



だからこそ、自分がどこまで深く切っているのかもわからない。



流れ出る血の量は増える一方だ。



「千花」



名前を呼ばれ、振り向く。



スリスリと頬を撫でる叶斗の手は気持ちいい。



情緒不安定っていうより、なんて言うか…その時その時の気分が変わるから、自分でも上手くコントロール出来ない。



叶斗を認識出来る時もあれば、出来ない時もある。



拒絶もそうだ。



頭の中に壮が出てくると、もうそれしか考えられなくなる。



恐怖に支配される。



「叶斗」



「ん?」



「キス……したい」



私の言葉に、チュッ…とキスをしてくれた。



だけど、足りなくて…。



叶斗の首に手を回してもっと、とせがむ。



全てバレたんだ…もう何も隠さなくていい。



「……シたい」



「…帰ったらたっぷり、味わわせろ」






* * *






久しぶりのセックスは気持ちよかった。



何ヶ月ぶりに抱かれたのだろう…。



心も身体も、叶斗で満たされた。



たくさん与えてくれて、たくさん愛してくれた。



外が明るくなる頃に、私たちは眠りについた。

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