第98話

千花side




今日も1日切っていく。



手首から流れる血を見ても何も思わない。



それが日課になってるんだ、毎日見てる紅色あかいろ



どのくらいの深さを切ってるのかわからなくなり、洗面所に向かおうと立ち上がると目の前に朱羽がいた。



「ヒッ……」



夢中で朱羽がいること忘れてた。



「千花、様」



「…朱羽、どうしたの?」



平静を装うなんて無理だった。



「……私の存在に気付かない程夢中になっていたようで」



「…………だから何?」



傷口が見えないよう後ろに隠す。



だけど、流れる血は自分の意思で止めることはできない。



「叶斗様にお話した方が良いかと…」



「言わないでよ!叶斗には絶対に言わないで!」



叶斗には絶対に言って欲しくない。



私の必死な姿に朱羽は驚いていた。



「違うの、違うの…。私悪くない、悪くない……ただ、どうしようも無くて……」



朱羽の服を掴み、赤く染めてしまう。



「千花様、傷が深くならないうちに叶斗様へお話ください。私からはもう何も言いません。ですがそれが酷くなってしまってからでは遅いです」



私は朱羽の言葉に疑問を持った。



『もう何も言わない』って何か言ったの?



叶斗は既に知ってるの?



「……あんた、叶斗に言ったの?」



震える声で聞いた。



「リストカットは、言ってません…」



「…………てことは、痣は言ってあるんだね」



「申し訳ありません。千花様を叩いた時に聞かれました」



「そう…」



なんか、どうでもよくなってきた。



「部屋から出てって」



私の様子を察してか、何言わず出ていってくれた。



「アハハッ……もうダメかもね」



洗面所へ行き、血を流した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る