第92話

チリン…と音がして中に入る。



2回目の来店で、道は前に朱羽と一緒に来た所を通ってきた。



「純夜、頼む」



「お待ちしてましたよ、千花さん」



ニコッと微笑んで、優しく話しかけてくれた。



「例え純夜でも、手ェ出したら殺すぞ」



「何も言ってないでしょう?それに叶斗の女に手ェ出す奴なんているの?」



「いるかもなァ?」



こんな会話してるけど、本当に仲良いんだよな?この2人。



「彫る刺青は伝えた通りだ、あとは千花に任せる」



「では、部屋へ案外致しますね」



前回と同じ部屋に通され、早速始まる。



「痛かったら遠慮なく言ってくださいね」



「……うん」






* * *






「叶斗に脅されたりしてない?」



「うん…してない」



「そっか」



話しかけてくれながら、手際よく彫ってくれる。



「千花さんは愛されているんだね」



「……」



その言葉に黙った。



確かに愛されていると思うけど、周りが考えるような「愛し方」ではない。



「お互い薬指ないって相当な覚悟ないと出来ないでしょ?結構自分勝手な部分あるから大変だと思うけど、これからも叶斗をよろしくね」



私は左手を隠すように自分の手を握る。



でもなぜその意味がわかったのか疑問に思った。



何年も叶斗のこと見てきてるからかな?



「……紫波さんは、」



「ん?」



「おかしいと…思わないんですか?」



「何も思わないよ。2人で決めたことなら他が口出しすることじゃないでしょ?それに…」



手を止め、私と目が合う。



「千花さんも相当狂ってると思うから、叶斗と一緒にいて心地いいんじゃないかな?」



「…うん!私叶斗といるの、好き!」



紫波さんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐ微笑んでくれた。



「2人の間になんて…誰も入れないよ」

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