痛み

第91話

「叶斗様、部屋の片付け終わりました」



「あぁ」



1週間くらいかけて、朱羽1人で片付けてくれた。



その間に私と叶斗は新しい家具を買いに外出。



体力が戻らないため休憩が多かったが、私に合わせてくれてゆっくり見るとこができた。



「早く新しい家具届くといいなぁ」



「すぐ届くって。その間は殺風景だけどな」



「仕方ないね。明日から仕事でしょ?私部屋にいてもいい?」



これに対してどう答えてくるか。



私は叶斗の言葉に従う。



仕事場に連れて行くか、部屋で待ってていいか…。



「部屋に居ていいぜ。ただし、1人での外出は禁止な」



「うん!あとね、前に外に出たじゃん?その時に紫波さんにやって貰いたかったことがあって、」



「…お前、純夜じゅんやに何用だったんだよ」



名前を出しただけで明らかに不機嫌になった。



「叶斗の叶って文字あるでしょ?それを太ももでも腕でも、どこでもいいから彫ってほしくて…」



「…」



「ダメ?」



少し考えてから、叶斗は答えを出した。



「なら、周りにアイビー入れろ」



「アイビーって病院に持ってきてくれた花?」



「あぁ、意味知ってるか?」



「永遠の愛だよね?」



看護師に教えてもらった通りに答えた。



「俺がそんな意味で送るかよ、死んでも離れねぇって意味だ」



「そんな花言葉あるの?」



「ある。調べてみろよ、出てくるぜ」



ポチポチと検索かけると出てきた。



「……叶斗らしいね」



ボソッと聞こえない声で呟く。



だけど、私には自分は死ぬかもしれないと言われている気がした。



「アイビー入れるから彫っていいよね?」



上手く笑えてるだろうか……?



不安な感情を見せれば絶対に叶斗は私の傍にいる。



でも、迷惑にはなりたくないから…。



「いいぜ」



頭を撫でて、許可してくれた。






* * *






優しく微笑んでくれる叶斗に…隠してたくない。



打ち明けたい。



救って欲しいなんて我儘…言いたい。

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