第89話

私はその提案に乗る。



「…それ、いいね」



「なんだよ、おまえも離れる気ねぇじゃん」



「……指切り落としてから言ってくんない?」



「だな…。手元にチャカしかねぇけど、これでいいか?」



「うん…貸して」



叶斗から奪うように取った。



「薬指?それとも小指?中指でもいいかなー」



私はどの指でもいいけど、日常生活に支障が出ないためにもそこら辺の指がいいのではと思い聞く。



「俺とずっといるって誓えるか?」



聞いた事とは違く、質問で返された。



「何それ。そんなこと必要?」



「必要。俺は神に誓えるっつったからな」



「私も、誓える。……ねぇ叶斗」



「ん?」



「責任………取ってね?」



「んだよ…俺以外にお前を愛せる奴いるかよ、めんどくせぇし泣き虫だし、手は掛かるしよー」



「何?嫌なの?」



「いーや。そんな千花を愛してるぜ」



1つ、唇にキスを落とす。



本当に離れないなら、私は心から叶斗を信じる。



「信じて、いい?」



「あ?信じるために指落とすんだろ。なんの為の提案だよ」



「うん、そうだね」



銃を持つ手を叶斗は包み込み、示すように薬指に銃口を当てられた。



「指輪の変わり、な?」



「うんっ!」



静かな夜の海に2発、銃声が響く。



落ちた指は海に流した。






* * *






相当狂ってたんだと思う。



こんな事でしか、私は叶斗を信じれなくなった。



言葉で、行動で、ちゃんと信じていればよかった。



ちゃんと「愛」を与え続けてくれたのに、それがいつの間にか「狂愛」に変わっていた。



私も叶斗も抜け出せなくなるほど、お互いにお互いを求めて、依存していた。






止められないほど、落ちて逝った……。

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