第88話

もう一度私は頼んでみた。



どうせ答えはNOだ。



分かりきったこと聞いて馬鹿だと思うけど、肯定して欲しい。



「…それは出来ない」



「わかってる。もういいよ」



思った通りの答えで、諦めた。



この先同じことを聞いても、YESは出てこない。



「なんで俺を避けてたんだ」



「…離れたいから」



私は『私』を忘れていた。



「もう私の一部である叶斗を引き離すのには最適だから。ああ言えば苦しまなくて済む…」



「俺といんのが辛いって言いてぇのかよ」



「…………うん、だって…」



視界が滲んだ。



「だって…ッ……もう十分愛を貰ってるから」



お願いだから、もう捨てて。



「こんなに愛されたことは初めてで……どうしていいか、わからないよっ」



「…千花」



「叶斗から貰えば貰うほど…苦しくなるんだよっ」



十分過ぎる愛に心が限界を迎えてる。



「これ以上…愛を与えないでっ……叶斗から離れられなくなるじゃんッ!」



「…なら離れなきゃいいだろ」



抱きしめられた。



「そういう問題じゃないの!そういう問題じゃなくて……」



言葉にできないこの気持ち、どう表せばいい?



「……お前がどう思うと俺は離す気はねぇ。どこへ行っても見つけ出す」



「……違う」



「どんな姿になっても、俺はお前を愛す」



「…やめて」



会話が成り立っていない。



「俺を信じろ」



「やめてよ!!」



叶斗の言葉を聞きたくなくて、大声を上げた。



「やめてよ…信じれば信じるほど、傷付くのはこっちなんだよ?」



涙は止まることを知らない。



傷付くのは散々。



愛する人に傷付けられるのは1番ごめんだ。



「信じろ。神にだって誓ってやるよ、お前の傍は離れねぇ」



なんでそんな自信あるのよ…。



たかが言葉。



そんなの録音でもしとかない限り、忘れていく。



少しの沈黙の後、叶斗は言った。



「指でも切り落とすか?」

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