第87話

歩き続けて着いた場所は海。



でもここどこ?



何時間歩いたんだろう…。



冬は日が暮れるのが早いからもう外は暗い。



砂浜に座り、海を眺める。



寒すぎる海は私の心みたいに冷たい。



頭を空っぽにして、ただ時間が過ぎるのを待つ。



波の音が心地いい。



毎日このくらい静かな世界でいいのに。



この静かな時間は長くは続かなかった。



遠いのに…ハッキリと名前を呼ぶ声が聞こえた。



汗だくで、息も荒れ、冬に見るような姿をしていなかった。



それにさっきまで人殺してたと思うような血が服に付いていた。



「お前、なんで電話繋がんねぇんだよッ!」



「……切ってるから」



「時間くらい教えろっつの」



「なんの時間?」



「帰る時間だろ。1人で出歩くな」



隣に座り込む。



「…病院行ったらもう退院したって言われて、なんで俺の事待たねぇんだよって思った」



「うん」



「迎えに来ねぇなんて一言も言ってねぇだろ?」



「うん」



「……俺じゃお前の不安は取り除けねぇのか?」



「不安?何それ。私はただ、邪魔なやつを消せって事であんたに頼んだんだよ。何勝手にそんな解釈してんの?」



笑いながら話す。



馬鹿げてる考えはやめなよ。



「…」



「私はあんたを待つなんて言ってないし、ここまで追って来て欲しいなんて思ってなかった」



私の変化に気付いてるのか、黙ってしまった。



「……殺してきた?」



「あぁ、何人もな」



「その熱冷める前に私も殺してよ」

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