第84話

あの日から、叶斗は1度も来なくなった。



花が変わらない。ずっとアイビーのまま。



それがこれからも私を愛すという風に見えて、心が痛い。



永遠の愛なんて、そんなの存在しないんだから。



愛が苦しいなんて、そんな事思わなかった。



いや、これ以上自分の中に入り込んで欲しくないという言い訳に過ぎないのかもしれない。



「美南さーん、もう少しで退院できますよね?」



「…うん」



「彼氏さん、来るといいですね!」



「……そうだね」



彼氏…ねぇ……。



「嬉しくないんですか?」



「別に」



「またまた〜、けどあの日から花変わりませんね」



気付かんくていいっつの。



仕事終わったなら出てって欲しい。



「けど、アイビーがずっとってことはこれからも愛してるって事なんじゃないんですか?」



「…」



「彼氏さん、見たいな〜。とーってもかっこいい人なんだろうな〜」



1人で色々言ってるが、叶斗は表で住んでるやつとは気は合わなそう。



「また来ますね〜」



退院したら私、どうしたらいいんだろう。



そんな事を考えながら退院日まで近づく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る