第82話
「夜中まで起きてるの?」
「…まぁ」
「あまり夜更かしはしないでね〜。誰か分かったら寝てくださ〜い」
もう話しかけてこないで。
ウザいんだよ。
あんたに関係ねぇだろ。
「じゃあ、おやすみなさい」
「……あぁ」
静かになった部屋で叶斗を待つ。
12時を回ろうとした頃、外からカツ…カツ……と靴の音が聞こえた。
ハッと思った。
靴の音だけでわかる、叶斗だ。
静かに扉が開いた先にいる叶斗と目が合う。
「……起きてたのか」
「なんで、この時間に来るの?」
「俺の都合のいい時間だからな」
「……そう」
嘘つき。
この時間は仕事終わってるはず。
いつも寝てる時間だもん。
「寝ろよ」
なぜか部屋に入らずそのまま帰ろうとする叶斗を止めた。
「花…」
その言葉に足を止める。
「毎日違うって看護師に言われた……叶斗でしょ?」
「…」
「置いていかないの?」
「……」
「まだ……私の事、好き…なの?」
「…………は?」
怯む事なく、私は言葉を続ける。
「朱羽から話聞いてるんでしょ?ODに自傷行為。そんな事しても私を隣に置いておきたい?私が叶斗の立場なら…もう捨ててるよ」
「…お前は俺じゃねぇだろ」
「そうだね、だけど…好きになる要素なんてもうどこにもないよ?」
私の元に歩いてきて、首が取れるんじゃないかってくらい強く襟を掴まれた。
「いっ!?」
急に痛みが走り、顔を歪める。
「テメェ…ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ。初めて会った時言ったよな?お前の命は俺の手の中にある。それを分かって言葉を発しろ」
「なら、殺せばいいじゃない」
「…ッ」
頭は冷静に働いていた。
首元にある手を退かす。
「私は黒く染って、呑まれる…それにあんたに迷惑かけてる。こんな邪魔なやつ頭に1発弾入れれば死ぬって。ね?殺してよ」
「テメェが勝手に決めんなよ…」
「なんで?こんな事でもしない限り引き金引かないでしょ、あんた…」
私はもう十分なんだよ。
叶斗からの愛は沢山貰ったの。
私はその愛を返すことも出来ず、終いには叶斗に殺してと願う。
我儘過ぎる私をその手で終わらせて欲しい。
「チッ…」
何故か舌打ちをして出てってしまった。
これで良かったんだよ。
嫌われれば、好きなんて感情がなくなれば、容赦なく私を殺せる。
だけど……少し言い過ぎた、かな…。
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