第76話

叶斗side




ピリリ…と鳴るスマホを取る。



『……叶斗様、K病院へ直ちに向かってください』



「…は?お前何言ってんの?」



朱羽が何言ってるか全く理解できなかった。



『千花様が……事故に巻き込まれました…』



「事故」という言葉に、耳を疑った。



急いで病院へ駆けつける。



「おい!ここに千花来なかったか!?」



「美南千花様ですね、今緊急手術室で手術中です。あとここは病院ですのでお静かにお願いします」



手術なんてしてんのか?



そんなに重症なのかよ。



手術室の前で終わるのを待ち続ける。



握ってる手の爪が食い込んで、手のひらから血が垂れる。



手術中のライトが消え、運ばれる千花の姿があった。



「美南千花様のご家族で間違いありませんか?」



「状態はどうなんだ」



「とても悪いです…運ばれてきた状態は頭から血を流し、打撲と骨折までしていました。命は取り留めました。後は様子を見ます」



一礼し、持ち場へ戻って行った。



病室へ入り、千花を見下ろす。



「……生きてんだよな?」



当然言葉なんて返ってくるはずもない。



朝見た姿とは違いすぎて、本当に千花なのか疑う。



ふと、頬に事故とは違うような痕があった。



叩かれたのか…?



部屋にいるなら叩く奴は朱羽しかいない。



朱羽に電話をかける。



「後でお前に話がある」



『…はい』



寝てる千花の頬を撫で、病室を出た。

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