第75話

場所なんて知らないからフラフラと歩く。



金は持ってきたけど、スマホは部屋に置きっぱなしだった。



太陽の光が痛い。



何とか見つけた店へ入る。



剃刀と薬を手に取り、レジで会計を済ます。



店を出た途端、キキィーーーッと車の音がして振り向く。



車がスローモーションのように見えた。



ハンドル操作を誤ったのか、それとも故障か、故意もありえる……どうでもいいが、車は私の方に向かって突っ込んできた。



「逃げてっ!!」と誰かの声が聞こえたが、避けれるはずもなく、ドンッ!と鈍い音がした。



ボキボキッ…と身体から出るような音ではない音が、私の耳に届く。



店のガラスに私と車は突っ込み、周りから声をかけられる。



「おい、大丈夫かよ!?」



「誰か救急車呼んで!人が巻き込まれたのよ!」



何これ…外に出た罰?



身体中痛い……。



「しっかりしろ!今救急車呼んだからな!」



誰に言ってんの?



なんか……血の匂いがする。



意識が薄れゆく中、サイレンが聞こえた気がした。

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