第74話

「私は…千花様に生きていて欲しいです……」



「そ」



叶斗と同じじゃん。



叩かれた頬を擦りながら、朱羽に言った。



「叶斗に言うなよ。自傷行為は元からやってたんだ。叶斗が知ればどんな手を使ってでも私を傍に置く。迷惑かけてんのにそんな事出来ねぇからな」



「……入浴も、ドレスも着ることが難しくなると思いますが…それでも、ですか?」



「うん……風呂は一緒に入んないし、外に出なければ服着ることなんてないだろ?叶斗の服着てりゃ腕も足も隠せる」



青紫色に変色した足の箇所を撫でながら、話す。



モット…ヤリタイナ……。



「ねぇ朱羽…剃刀買ってきてよ」



「……はい?」



「だから、剃刀。分かるよね?」



「………叶斗様へお伝えします」



その言葉を聞いて、さらに口調が荒くなる。



「あぁ゛?てめぇ誰に口聞いてんだ。買えっつってんだから買ってこいよ!どっちの見方だよ、叶斗なの?私なの?曖昧にいるの止めてくんない!?」



「……申し訳ありません」



「はぁ…」と、溜息をつき、言い放つ。



「私1人で行ってくる。叶斗に言っといて、外出するって。その他喋るんだったら、私の護衛なんて二度としないで。私1人で十分」



「千花様!それは許可されていません、部屋にいてください」



「ごめん、無理。もう疲れた……」



私がどう映ったかは分からない。



だけど、私を引き留められないとわかったのか…それ以上は言ってこなかった。



パタン、と扉を閉め薬局へ向かう。






* * *






朱羽の言葉を守れば、こんな事にはならなかった。



事が起こった後じゃ遅い。

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