第72話

叶斗に嫌われたくないけど、私が言うのを待っててくれる。



覚悟を決め、重たい口を開いて真実を言う。



「1日に………平気で5瓶は、なくなる」



「ッ…」



息を呑む音が聞こえた。



「ごめん、なさい…」



わかってる、わかってるんだよ…。



私が悪いの……。



だけど、薬に頼らないと、叶斗に沢山我儘言って嫌われるより良かったの…。



「……死にたいのか?」



「何…言ってるの?」



叶斗の口から死にたいと出てくるとは思わなかった。



自分に従えって、自分だけを見ろってあんなに言ってくれたのに。



「それでよく…死ななかったな」



「……うん」



「正直に言えよ。死にたいか?」



2回聞かれ、私は笑ってしまった。



「ハハッ……アハハッ、死にたいよ?そしたら私、叶斗と朱羽に迷惑かけなくて済むからさ。私さえいなければみんな幸せじゃんッ!」



迷惑なんてかけたくない。



2人が生きてるなら、それでいい。



私1人が死んたところで、誰も悲しまない。



「なら、なんで泣いてんだよ」



ニコっと笑う私とは対称的な叶斗。



「泣いて……ない、よ?」



「どこが泣いてねぇんだよ。涙出でるっつの」



溢れ出る涙を拭われる。



「本当にごめんな」



抱きしめられた。



何に対して謝ってるの?



「我儘、言えよ?あんまり言えねぇだろうけど、できる限り聞いてやるから」



何を思ったか、私は虚勢を張った。



「……私は大丈夫。もし捨てたかったらいつでも捨ててね」



「誰が捨てるか…」



叶斗の背に腕を回し、抱き締め返した。



「もう十分、叶斗からの愛は貰ったよ」



これ以上は、本当に離れられなくなるから欲しくない。



捨てられた時の絶望が、浮かぶ。



「俺はまだ伝えきれてねぇがな」



「……ありがとう」



私の礼に叶斗は何も言わなくなった。

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