第71話
カラン、と瓶の中の物を音を立てる。
あと、3粒か…。
手に取って飲み込む。
「あーん」
今日何個目?わかんないや。
瓶は空っぽになり、朱羽を呼ぶためドアに近付く。
「朱羽、持ってきて」
声を掛けて返事を待っていると、カチャ…と扉が開いた。
「…ぇ」
目の前にいたのは叶斗。
「ど、したの?仕事は?」
バレちゃいけない、バレちゃ…いけない。
平静を装わないと。
「早く終わったから、今帰ってきた。お前が欲しいのはこれか?」
叶斗の手にあったのを見て、「ヒッ…」と喉が鳴る。
「……ち、違うよ…おやつ、欲しいなって………チーズケーキ食べたいなって思って…」
「……」
沈黙が怖い…。怒られる。
右手に隠してある瓶を今の私の精一杯の力で握る。
暫くした後、叶斗が私の右腕を掴んだ。
「やめてっ!離して!」
力に敵うはずもなく、呆気なくバレる。
「……いつからだ」
「こ、これは…頭痛薬だし、何でもない……」
必死で言い訳を考えても頭が回らない。
何も思いつかない。
「答えろ…いつから飲んでんだ」
「だからっ、頭痛薬で……」
「千花」
目を合わせた叶斗は悲しそうな顔をしていた。
「…っ」
「俺は答えて欲しい…まだ分からないか?千花を愛しているからこそ、俺に教えて欲しい。何がお前をそうさせる」
愛…している……。
叶斗は……私を、愛している。
「失声症の時から……飲んでいた薬」
「あぁ」
「それと………これは頭痛薬…他にも色んな薬、飲んでた」
「1日何粒だ」
答えるのを躊躇った。
自分で把握してないのもあるけど、そんな事言ったらどう思うかなんてわかる。
先を促すように、叶斗は優しく頬を撫でた。
「……わかんない…数えてないの……。だけど、」
「だけど?」
唇を噛み締める。
言いたくない。
これを言っても、私を愛してくれるの?
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