第70話

口に運んでくれる飯は私に合わせてくれて、量は少なくしてくれた。



「大丈夫か?」



「……もう要らない」



叶斗の質問には答えなかった。



「少しずつ食えるようになるといいな」



1口だけ、それも少量なのに、偉い偉いと頭を撫でてくる。



「吐きたかったら吐けよ?無理する事ねぇからな」



「うん」



目の前にある料理を見ても食欲はそそられない…。



叶斗の姿を見つめる。



「ん?どした?」



「美味し?」



「あぁ、美味いぞ」



数ヶ月前までは一緒に食ってたのに、なんで私だけこんな風になるんだろ…。



また呑まれるであろう私の手を握る。



「気ぃ保てよ。まぁ、呑まれても俺が戻してやるけどな」



ギュッと握り返す。



「うんっ」






* * *






既にバレているのに、なぜ隠す。



悪いことしてる自覚があるから、叶斗に迷惑かけたくないから…。



ただの言い訳で叶斗に心配かけていた。

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