第64話

「千花、今日も待ってろよ」



私は今日、叶斗を引き止めた。



あまり力の入らない手で、服を掴む。



クイッと引っ張られた感覚に気付く叶斗。



「ん?どうした?」



フルフルと行動で示す。



「早く帰ってくっから待ってろ、な?」



それでも嫌だと、首を振る。



「一緒に来るか?」



…外には出たくない。



から、やっぱり否定する。



「昼前には帰って来れるようにするから待ってろ」



優しく撫でて、部屋を出て行く。



最近の叶斗は隈が酷すぎて、見ていられない。



本当は仕事に行って欲しくない。



倒れたらどうするの?



傍にいたいけど……。



いいや、私が傍にいるのはいけないことかもしれない。



こんな私を愛してると言っても、これ以上私を壊させないようにする為の嘘かもしれない。



わからないの…。



否定的に物事を考えていると、朱羽が険しい表情で部屋に入ってきた。



「千花様、落ち着いて聞いてください。叶斗様が…」



言葉を聞いて、頭りよ先に身体が動いていた。



後ろから声が聞こえる。



「千花様!靴をお履きください!!千花様!!」

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